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工学部 機械工学科

【特集】小惑星探査機「はやぶさ」を超えて!目指せ、新型ロケットエンジンの開発!(1/3)

2020年4月11日 工学部 機械工学科

 機械工学科では、2020年度新たに2名の先生をお迎えいたしました。先日紹介しました和田先生に続きまして、田原先生の自己紹介記事を掲載させていただきます。

宇宙推進ロケット工学研究室・田原弘一(たはらひろかず)より学生諸君へ!
宇宙空間では地上で予想もしないことが起こります。学生諸君には、過酷な宇宙環境で稼動するロケットや人工衛星の開発研究を通して、常に挑戦的に、常識にとらわれない新しい電気機械システムを創造できる、技術研究者としての素養(ガッツ(?))を身につけてほしいと切に思います。自由な発想でユニークなアイデアを出し実践してほしいと思います。
「未来は決まってはいない!未来はつくるものである。
(もう一つ大事なことは)挑戦しなければ未来は開かない!」。

一緒に最先端の宇宙開発に挑みましょう!

宇宙大航海時代の到来

(a) 小惑星探査機「はやぶさ2」の本体
(b) 小惑星「リュウグウ」への接近
(c) 主推進エンジンである電気推進ロケットの一種「イオンエンジン」の高速プラズマ噴射

図1 宇宙航空研究開発機構(JAXA)小惑星探査機「はやぶさ2」(JAXA提供)

 世界中の人々を感動させ、日本の宇宙開発技術の高さを知らしめた、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還(2010年6月)から4年、2014年12月、「はやぶさ2」(図1(a))がHII-Aロケットによって打ち上げられました。「はやぶさ」は太陽系形成の起源を明らかにすべく小惑星「イトカワ」の物資を地球に持ち帰りましたが、「はやぶさ2」はさらに太陽系形成時の水や有機物(生命の起源!)を調査すべく「リュウグウ」(「浦島太郎」物語の「竜宮」である!)という小惑星への往復飛行を目指しています(図1(b))。2018年にリュウグウに無事到着し、小惑星への着陸(タッチダウン!)、物資採取を敢行し、調査を終え、地球への帰路の最中です。地球への帰還は2020年末です。まさに人類の英知が太陽系、我々人類の起源に迫ろうとしています。「はやぶさ2」の往復飛行は「はやぶさ」と同様に、電気推進ロケットエンジンの一種である「マイクロ波放電式イオンエンジン」により行われています(図1(c))。

図2 1GW級太陽発電衛星から地球への電力伝送(JAXA提供)
図3 有人火星探査船の火星着陸(JAXA提供)

 「宇宙は人類に残された最後のフロンティア」、有名な“スタートレック”のフレーズですが、まさに宇宙大航海時代の幕開けです。諸外国においても同様の計画が立案され活発に準備がなされています。これらの大型プロジェクトはもちろんその膨大な予算規模から国際協力のもとに今後遂行されます。月基地建造計画では、国際宇宙ステーション(ISS)を足がかりに、ISSから月まで大量の物資を電気ロケットにより輸送し基地建造にあたります。一気にエネルギー問題を解決できる、1 GW級の太陽発電衛星建造計画(図2)では、地球低高度軌道から高高度軌道まで建造資材を輸送します。さらに、小惑星捕獲ミッションでは、小惑星帯まで電気ロケットにより動力航行し、小惑星捕獲後、月周辺の力学的安定点(各種引力が平衡したラグランジェポイント)へ輸送し、宇宙飛行士を小惑星に派遣し探査を行います。地球への小惑星衝突回避技術の獲得を目指しています(ロシアでの小惑星衝突への対応)。最終目標である、有人火星探査(図3)では、宇宙放射線の人体への影響を避けるために、大推力の電気ロケットにより、短期間に火星到着を目指します。さらに、水と氷がある、木星の惑星もターゲットです。
 火星、木星などの惑星空間、太陽系内を多くの大型宇宙船が自由に行き来する、太陽系が人類の生活圏になる日はもうそこまで来ています。宇宙大航海の成功は、宇宙航行用高性能電気推進ロケットの開発にかかっています。